モーツァルト・イヤー・プレコンサート

第164回 定 期 演 奏 会 

延原武春のモーツァルト〜
〜作曲者の意図した魂のゆさぶりを、
その当時の演奏語法に基づいて伝えたい〜


指揮:延原武春
独唱:畑儀文ほか
テレマン室内合唱団/テレマン室内管弦楽団

いずみホール
6月17日(金) 午後7:30開演
大阪商工会議所 大阪ナイトカルチャー協賛
 日本で唯一、固定メンバー編成によるバロック楽器の演奏で、独自の演奏語法を確立して高い評価を受けているテレマン協会が、創立40周年以後求めてきた新しいコンセプトのひとつがバロック演奏語法によるモダン楽器の演奏です。常に「斬新」でありながら「正当性」を求める続ける延原、そんな延原のモーツァルト名曲レクイエムついに登場です!

 今回はジュスマイヤー版を使用します。この版には従来から賛否両論があるものの、延原としてはジュスマイヤーが「やはりもっとも生前のモーツァルトに近しい存在であった」ということに重点をおいた上での選択です。
 また延原は「演奏を聞いて感動する…というのとはまた違った涙というのがあると思う。魂への訴えかけとでも言うべきだろうか?作曲者の魂を受け入れ、それを聞く人にぶつける…あえて「原典的」であることに固執するつもりはないが、「作曲者の魂」ということを考えると、その時代のやり方でそれを受け入れ、現代的な形でそれをぶつけてゆくことが大事かもしれない。極度なロマンティックをさけ、また極度な古楽的思考もさけ、十八世紀の音楽を長年やってきた経験から割り出された、その時代の「ロマンティシズム」「魂のゆさぶり」を見出したい」とも語っています。「メサイア」をはじめ多くの宗教曲を手がけ、また「原典的」なベートーヴェンの第九を世界に先駆けて導き出した延原による、モーツァルト「レクイエム」。どのような「魂の対話」がみられるのかご期待ください。


 延原は「バロック演奏語法によるバロック楽器の新しい魅力」を追求した公演の二回目として4月東京定期を成功させ、最近はアンサンブル金沢とのプライベートコンサート的な共演でも話題を呼んでいます。オーボエ奏者としても健在で昨年9月には2枚目のCDを発刊しています。また、カトリック夙川教会における教会音楽シリーズの全150回を通して企画し指揮した延原は、先日150回記念演奏会を成功裏に終えて新たな出発点に立ったとますます意気盛んです。

 来年2006年はモーツァルトの生誕250年にあたりますが、昨年160回記念定期ではその「プレプレコンサート」として中野振一郎からバロック演奏語法を学んだロシア出身のピアニスト、イリーナ・メジューエワを迎えて、モーツァルト演奏に新たな一ページを開こうと「ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調「ジュノム」K.271」などに取り組みました。そして今年は同コンセプトを一層推し進めるべく、モーツァルトの生誕250年「プレコンサート」として、「ヴァイオリンとヴィオラの為の協奏交響曲変ホ長調K.364」、「アリア・この美しい御手と瞳のためにK.612」、そして久々にテレマン室内合唱団による「レクイエム ニ短調K.626」、これら全てをテレマンがはぐくんできた奏者で演奏します。
出 演
指揮.延原武春 & テレマン室内合唱団 & テレマン室内管弦楽団
Sop.井塚有子/Alt.山本有香子/Ten.畑儀文/Bass.篠部信宏
Vn.大谷史子/Va.姜隆光/Cb.田中寿代

曲 目
<W.A.モーツァルト>
ヴァイオリンとヴィオラの為の協奏交響曲 変ホ長調 K.364
アリア「この美しい御手と瞳のために」K.612
レクイエム ニ短調 K.626

入場料一般前売り:3,500円(当日:4,000円)、大学生:1,500円(当日共)
65歳以上、高校生以下:1,000円(当日共)
※当日座席指定午後6:00より
☆ モーツァルト
 ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart 1756〜91)は、古典派を代表する作曲家であるとともに、歴史上きわめて有名な音楽家として世界じゅうにその名を知られています。1756年にオーストリアのザルツブルクで生まれ、音楽一家に育ちました。モーツァルトは、交響曲、協奏曲、ソナタ、ミサ曲、オラトリオなどに多くの名曲を残しています。
 モーツァルトは、他の分野でもこれまでさまざまなかたちで作品のテーマにとりあげられてきましたが、なかでもよく知られているのは、1984年に封切られた映画「アマデウス」です。これはウィーン時代のモーツァルトと、ライバル音楽家サリエリの毒殺説をテーマにした映画で、全世界で大ヒットし、アカデミー賞も受賞しています。全編を通じて流れている印象的で強く心にうったえかける音楽が、今回演奏する「レクイエム ニ短調K.626」です。

☆ ヴァイオリンとヴィオラの為の協奏交響曲変ホ長調K.364
 1779年晩夏、モーツァルト23歳の年に ザルツブルクで書かれました。独奏のヴァイオリンが歌った後をヴィオラが必ず寸分たがわず反復し、2つの楽器が対等さを競う形になっています。ヴィオラのパートはニ長調で書かれていますが半音高く弦を張って演奏することで、独奏ヴァイオリンに負けずに明るく響くかせる効果があります。
 ヴァイオリンを、ウィーンで学びウィーン古典派の作品をライフワークとし、意欲的なソロコンサートを開催するなど進境著しい大谷史子が、ヴィオラを新進気鋭の姜隆光が演奏します。

☆ コンサート・アリア「この美しい御手と瞳のために」K.612
 モーツァルトが亡くなる1791年の3月8日、ウィーンでバス歌手フランツ・ゲルルとコントラバス奏者F・ピシュルベルガーの為に作曲したコンサート・アリアで、超絶技巧のコントラバスの独奏パートが付けられています。バス歌手フランツ・クサーヴァー・ゲルルは、1791年9月30日午後7時、ウィーン郊外のヴィーデン劇場で行われたオペラ「魔笛」の初演時にザラストロを務め、またモーツァルトの亡くなった12月5日の前日12月4日午後2時に未完のレクイエムの一種の試演がモーツァルトの病床で行なわれた際バスの声部を歌った歌手でもあります。ちなみにモーツァルト自身はこのときアルトパートを歌っています。
 バスパートを歌う篠部信宏はこのほどオランダ・アムステルダムのマックス・エグモンドのもとで修行を積み多くの成果を得て帰国しました。至難の演奏技法を求められるコントラバスパートを務める田中寿代の鮮やかな腕前ともどもご期待ください。

☆ レクイエム「死者のためのミサ曲」 ニ短調K.626  
 レクイエム ニ短調 K.626はモーツァルト(1756-1791)の作曲した「死者のためのミサ曲」で彼の最後の作品です。モーツァルトの早すぎた死により作品は未完のまま残され、彼の弟子フランツ・クサーヴァー・ジュスマイアにより補筆完成されました。
1791年、モーツァルトはヴィーンの聴衆の人気を失い苦しい生活を送っていました。旧知のシカネーダー一座から注文を受けたジングシュピール『魔笛』K.620の作曲をほぼ終えたモーツァルトはプラハでのボヘミア王としての皇帝レオポルト二世の戴冠式で上演するオペラ・セリア『皇帝ティトゥスの慈悲』K.621の注文を7月末に受け、これを優先して作曲します。ジュスマイアにレチタティーヴォの部分を手伝わせてようやく完成の目処がたち、8月末にプラハへ出発する直前、見知らぬ男が彼を尋ねました。男は匿名の依頼主からのレクイエムの作曲を依頼し、高額な報酬の一部を前払いして帰っていったといいます。

 9月中旬、プラハから戻ったモーツァルトは『魔笛』の残りを急いで書き上げ、9月30日の初演に間に合わせ、その後レクイエムの作曲に取りかかります、体調を崩しがちとなり11月20日ころには床を離れられなくなってしまいます。12月になり病状はさらに悪化して、モーツァルトは再び立ち直ることなく12月5日の未明に他界します。

 モーツァルトの死後、未亡人コンスタンツェと再婚したニッセンの著したモーツァルト伝などにより、彼は死の世界からの使者の依頼で自らのためにレクイエムを作曲していたのだという伝説が流布しました。当時依頼者が公になっていなかったことに加え、ロレンツォ・ダ・ポンテに宛てたとされる有名な書簡において、彼が死をいかに身近に感じているかを語り、灰色の服を着た使者に催促されて自分自身のためにレクイエムを作曲していると書いています。いかにも夭折した天才にふさわしいエピソードとして長らく語られてきましたが、1964年になってこの匿名の依頼者がフランツ・フォン・ヴァルゼック伯爵という田舎の領主であること、使者が伯爵の知人のライトゲープという人物であることが明らかになりました。ヴァルゼック伯爵はアマチュア音楽家であり、当時の有名作曲家に匿名で作品を作らせ、それを自分で写譜したうえで自らの名義で発表するという変わった趣味をもっていたのです。彼が1791年2月に若くして亡くなった夫人の追悼のために、モーツァルトにレクイエムを作曲させたというのが真相でした。従って何ら神秘的なできごとが起こったわけではなかったのです。

 今回はジュスマイヤー版で演奏します。独唱はソプラノを期待の新人井塚有子、アルトを最近テレマン協会の演奏会でソロを務め着実に力をつけている山本有香子、テノールをテレマン室内合唱団ミュージックディレクターでヨーロッパでの多くの演奏で高い評価を得ている日本を代表する歌手畑儀文、バスを前述のアリアを歌う篠部信宏が務めます。

参考:エンカルタ 総合大百科、フリー百科事典「ウィキペディア」ほか
(’05・05・13掲載)

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